2014年01月10日

物語としてのAC-10

コピーライブの後のやり切れなさを認めあえないで、酔ってごまかして、
そのうちごまかしきれなくなって、
ばかばかしいことで言い合いをはじめてとまらず、胸ぐらを掴んで、テーブルのコップをひっくり返して、となりの席のおっさんに、おーやれやれとけしかけられ、おしあってそのうちに吐いて、ぐちゃぐちゃな夜になる前に、
シブヤにむかった。

サディはまだジムにいた。

遅れたぼくの顔もみずに、バックを肩にかけると歩き出した。

ーー

酎ハイ3杯目の走り出しのアルコールの霧の中で自分の名前を呼ぶ声が響いた。
それはなつかしい感じがした。僕の名前なのか?

見知らぬ女性がぼくの名前を呼んでいるのに気がつくのにしばらくかかった。
ぼくが振り向いて彼女と目を合わせると混みあった居酒屋のテーブルの間を器用に走って近づいてきた。
「あの、お連さんが、トイレで、あの、たおれてます・・・」

救急車を降りて半分だけ明かりの点いた待合室にいた。いま眠りましたから病室に移しますのでと当直の看護士に言われて始発でアパートに帰った。ぐだぐだに混乱して酔もさめずふらついたままシャワーを浴びて、
ぼくは部屋においてあった彼女のナイキのジムバックを持って、病院にもどった。
清潔な朝と通勤の人々に、心底腹がたった。

朝食のトレイが下げられても大部屋にはスープの残り香と、宿命的な排泄物のにおいが入り混じっていた。時折,カーテンの向こうからのゲホケホという渇いた音が聞こえた。この臭いと共にぶよぶよと漂い,点滴のチューブの中を通って血液に混じり排泄され流されたら楽だなと思った。
サディの白い左腕に繋がれたチューブはスタンドにかけられたビニールの液体をぽたぽたと通している。サディは窓の外を見てこちらを見ていない。階下では外来へ行き交う人々が小さく見える。初夏のまじりけのない鋭角な光が白い布団に刺している。
たとえそれが病院であっても何かを終えて帰る場所があるというのはうらやましく思えた。

彼女は昨晩シブヤにいたままだった。赤のサマーニットにジーパンをはいたままベットに横になって窓を見ていた。

「着替えろよ」

彼女はジムバックから白いTシャツと黒のスエットを引っ張り出すと布団の中でごそごそ着替えた。点滴のチューブをいったんはずすのに看護士を呼んだ。

サディはゴムで髪をうしろにしばるとはじめてぼくを見て
「ありがと」と小さな声で言った。

そして肩まで布団をかけて横になるとまた窓を向いた。

サディはスタイルがよかったし,週に5日ワークアウトしているにしても病院の布団にくるんでしまうとそれはなんの意味もないことのように思えた。




posted by usaikuo at 11:57| Comment(0) | 日記
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