2013年10月13日

物語としてのAC-5

しばらくは自由な感じがしたがすぐに落ち着かなくなった。汗を渋りだしてからではないとビールを飲んではいけないのだと思い込むことにした。スポーツクラブという箱に通い続けた。そこのスタッフは笑顔が張り付いていて,客はこれ見よがしで学芸会のステージのようで,学校の休み時間のような関係ができて、女子をエロイ目線で、自分はそんな気持ちないよと堂々と見ることができたからすごかった。
他者がいて見れて見られていて、自分に向き合うことは必要なく、流れ続ける大音量の音楽で気持ち良く思考を止めて、やらされて、やらされてやってぞうきんのように自分を絞ってあせをかきウエアがびしょびしょになることがこのうえなく快感であった。ストレス解消とかダイエットとか健康のためとかそういう意味を一ミリも思わなかった。ただそうしなければいけない感じがしていた。
シブヤの真ん中で、日の高いうちから水着になり生ぬるいお湯につかっているのは申し訳ないような気分がいいような奇妙なような感じがしていた。汗をかいて風呂に入ってネオンが点いたばかりの街にふらふらともどるのは自分から意識をそらすのに役に立った。水ものまず地下の居酒屋に向かった。
そんな頃サディにあった。
サディは半年ぐらい前から同じ時間帯のジャズスタジオで会釈するようになったのだと思う。線が細くむねが小さめで,均整のとれた手足を使って踊っていた。バレエの経験があるもの特有の足の運びと腹と背中に引き上げがあった。スタジオではずいぶん若そうに見えたが、フロントでウエアではなく私服で化粧をしている姿を見た時,ぼくと同じくらいではないかと思った。去年の12月はじめに、いつもの会釈の後にちょっと間があり,コーヒーでも飲みませんか?とさそってとりあえず駅の方向に歩いたがコーヒーという時間帯でもないですねと地下の居酒屋に入った。
たっぷり汗を流してジャグジーに入ってシャワーを浴びた後の彼女はつやつやとぬれているようで年齢相応に色っぽかった。四角い紙に包まれた低い照明をはさんで向かいに座った時フリージアのシャンプーのにおいがした。もうこの時点でぼくのまけや欲求は明らかなのにそれに気がつかいないふりをして、たわいのない話を続けるのはぼくのくせだ。そしてどっちがほんとうかわからなくなりとことん酔いたくなる。
「コーヒーって感じじゃないわよね」
「運動の後だしね」
「こういうところ良く来るの?」
サディは口を尖らせて上目遣いに天井にたくさんぶさがった灯篭のような電球を見て言った。
「学生のころからね」
彼女はふ〜んとうなずいてピンクのポーチからメンソールの細長いたばこをとりだして吸っていい?と言った。
ぼくはうなずくとまた否認を使って見ていないものとして目の前の映像を無意識下に処理した。運動をしている女の人がたばこを吸うのをみると,彼女たちが自分で自分をいじめているような気がしてしまうのだ。ぼくは勝手に裏切られたような気がしていたがサディのたらこくちびるが色っぽかったのでそれもどうでもよくなった。ぼくは彼女の体の線やむねのふくらみやスリムなスパッツの中を思い浮かべてマスターベーションをしたことがあるのを思い出した。
「やめようと思ってるのよ」
ぼくに何かを見つけてサディが言った。
店内はまだ時間が早くて,お客はまばらだ。カウンターにメガネのおじさんが営業かばんを膝の横においてコップ酒を飲んでいた。おくの座敷には学生の一団がいえーとかおーとかまじすかとかぎゃあぎゃあさわいでいた。なつかしくうらやましい感情が湧いたがいまのぼくにはもう必要のないものだった。
ティーシャツに汗をじんわりかいていた。運動の後はからだに熱をもっている。タンブラーサイズの生ビールを2人とも黙って半分ほど飲んだところで目があって笑って一気に親密になった。
「あ〜おいしい」
「うん,後半戦,水を飲まないで我慢してたからなぁ。この一杯のために運動しているようなもんだなおれ」
彼女がそうよねと笑った時,白いセーターのむねのふくらみが大きくゆれたて,ぼくはセックスがおおおきくうずいた。
posted by usaikuo at 09:01| 日記